ヴィヨンの妻 / 太宰治

ずいぶん前に買っておいた本をやっと読むことができた。
太宰の短編集。

暗く、悲しく、絶望的、破滅的。

でもあたしは生まれ変わるなら、太宰になりたいと思う。
単純にうらやましいのだ。
いいところの家に生まれ、見た目も良いし、
酒に溺れ、毎日毎日せっせせっせと酒を飲み、
好き勝手ふらふらと遊び歩いて、
家族に迷惑をかけ、妻や子供に迷惑をかけつつも、
心優しい人たちに幾度も助けられ、
それでいて素晴らしい文才があって、
師にも認められ、友好な関係を保ち、
自ら死を選んで実行に移した後も、
こうやって多くの人に崇められている。

実にうらやましい人生ではないか。

やりたいことばっかりしている。
それが許されているのがうらやましい。

現代で言えば、さながら中島らもとでも言ったところであろうか。

彼らは自由だ。
それでいて不朽の才能があるから、許されるのだ。
そして認められるのだ。

女に生まれてしまった私は、どう転んでも実現し得ない人生。
そんなめちゃくちゃな女を支える旦那なんていない。

太宰はめちゃくちゃをしながらも、
陰で不平も言わず支えてくれる妻がいたから成り立ったのである。
中島も然り。

太宰を太宰たらしめていた、という点で、
妻という存は大きい。
その妻について描いた本書は、
太宰の中枢を映し出すという意味で、
特別な作品である。

それにしても太宰はれっきとした男であるにも関わらず、
女心の描写が巧みである。
よく分かっていらっしゃる。

あれだけ女の気持ちを理解していながら、
あのように酒に溺れて遊び歩いていたというのだから、
「こっちの気持ちを考えてよ!」なんて責めるにも責められない。

「女には、幸福も不幸も無いものです」
…中略…
「男には、不幸だけがあるんです。…」
(「ヴィヨンの妻」p.137頁)

日本が誇る、悲劇のヒーロー。

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