すいかの匂い / 江國香織

これは、ちょっとこわい。
なんというか、少女時代の思い出は残酷で冷酷でこわい。

「すいかの匂い」はぞくってするけど。
一番こわいのは「水の輪」。
ぶるってする。
「はるかちゃん」も苦手。
なんなんだろう。
少女の思い出。

昔住んでた大きな家に、大きなのっぽの古時計があった。
(今でもあるのだけど。)
その時計は、あのころのあたしにとってはとてつもなくのっぽで、
ぽっかり浮かんだ月と太陽のイラストと目が合うのがとてもこわかった。

何かの景品でもらった小さなピンクのふわふわなうさちゃんのキーホルダーを
とても大切にしていて、ティッシュで作ったベッドに寝かしていたりしたのに、
ある日うっかり落としてしまった。
あんなに歩き回って探したのになくなってた。孤独がこわかった。

思い出すのが辛いな。
こわくてさみしいんよな。
なんというか、優しく愛でる対象ではなくて、
ああ、過ぎ去ってよかった、みたいな、試練、というか。

少女時代なんてそんなものでしょう。
ばかげたユニット名に使えるほど
ノーテンキな単語じゃないでしょう。
とても奥深くて果てしない泥沼みたいだ。

そう思うともうあたしは少女じゃないのだな。
過ぎ去ってしまった、暗黒の少女時代に乾杯。

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