モルヒネ / 安達千夏

ぜったいあたしこのヒデなんかと付き合わない。
この主人公は本当に甘すぎるし優しすぎるし、プライドがない!
まあ、ひどい生い立ちだからしょうがないのかもしれないけれど。
だれからも褒められずに育ってくると、自然と自分に対して自信なんて持てなくなるよね。
あたしは褒められ続けてぬくぬくと育ってきたので、自信もあれば虚栄心もおそろしいくらいある。

この祥伝社文庫の本は初めて読んだけど、とてもいい。
最後に読者による100字批評なるページが付いているのだ。
なんて読者のためになる文庫本なのだろう。
いいね。

なんでこの本が気になってたのか、分からない。
おそらく、文庫本化される前から話題になっていて、
強烈なタイトルがあたしの脳内にこびりついていて、
古本屋で見つけた時、とっさに買ってしまったのだ。

長編恋愛小説、というジャンルらしいが、そうとは思わない。
主人公の性格も、ヒデも性格も、長瀬の性格もあんまり好きになれない。
やっぱり医者と結婚するのは、駄目なのかな、なんて思ってしまう。
昨日に引き続き、人はやたら、死について考える。
でも現在のこの状況の中で、そんなこととてもできないのだ。
もともとネガティブだったあたしの人生観でさえ、
今はなんとか生きなくちゃ、って思い始めてる。
それと同時にあたしの中での彼の存在感に対処しきれずに戸惑っている。
彼を、傷付けたくないけれど、傷付けられたくないから、じゃあ、どうなるか、なんて。

この小説でとても好きなフレーズがあって、あたしはいつもそれを呪文のように思い出すので、最後に抜粋しておく。

「…労働者は、まずカフェインでよれよれの脳細胞を叩き起こして、蓄積した疲労をごまかし、あとは当座のエネルギーになる食物をとにかく胃に納め、小走りで駆け出すものだ。そして仕事から戻れば、アルコールで、たかぶった神経を鈍らせ眠る。」(10ページ)

本当にそのとおりだな、と思う。
ここでいう労働者に所属しないあたしは、脳細胞を叩き起こす必要がなく、脳細胞が勝手に起き出すまで寝ているのだから気楽なもんだ。
それでも夜はアルコールに頼らないと眠れない。
シラフじゃ、すぐに朝だ。

とくに彼はいつも、カフェインで起きて、アルコールで寝ている。
元気なのかしら。
この小説の主人公と似ているところは、別に1週間とか、2週間とか、それ以上、声も聞かず、顔を合わさなくても、あたしは大丈夫だ、ということ。
たとえ2人が、婚約者、という、関係柄でも、ね。

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