
「ファッション イン ジャパン 1945-2020 —流行と社会」を観に行った時に、クリスタル族のファッションが展示してあって、そのキャプションにこの小説の言及があったので、すぐにメモった。買った。読んだ。
まず、最初のページを開いて衝撃だったよね。
本文が右の半ページ。そして左の半ページは全て注釈(NOTES)!!!
ほう、と思って、さくっと読んで次のページをめくると、おんなじ!
なるほどこういうスタイルね〜と衝撃でした。
海外の小説なんかは、わりと注釈が多くて(あとがきにも書いてあった)それはあって助かる情報(無いと場面がイメージできない場合もある)なんだけど、この本の注釈は、例えば「恵比寿」なんかついても書かれていて、それがかなり主観が混じってて、クスッとしちゃう。
注釈も含めて作品なのだと思った。
実際のところ、文字数でいったら注釈のほうが本文よりも多いんじゃないかな。
本編の物語だけ読むと、淡々としてさっぱりしてて、深みもない。
セックスシーンの描写でもいまいちそんなにのめり込めないし、それほど官能的にも感じない。
(あのシーンはさすがに注釈が少なくてよかった)
物語に深みと奥行きをもたらしているのが、注釈だと思った。
クリスタル族を生み出したすべてが、この注釈に詰まってた。
1981年に出された小説。私が生まれる5年前。
作家の田中康夫さんは当時現役の大学生だったらしい。
東京で生まれ(途中で長野に引っ越したらしいけど)、東京の大学生になると、この街がこんな風に見えるのか。
もう上京して10年にもなる私だけど、地名とか、街の描写とか、地理的な表現は、全然ピンとこなくて、今住んでるところの近所や行ったことある場所ならなんとなくイメージも浮かぶが(でも40年も経って街並みは全然違うのだろう)、東京で生まれ育って東京に土地勘がある人なら、この小説が何倍も輝いて見えるのだろう。
結局、本を読んでいてどれだけイメージがくっきり見えるかが、魅力度なのであろう。
だから私は40年前の東京という全然知らない世界に想いを馳せながら読んだ。
遠い世界の出来事であろうと思いつつ(そして主人公のヒロインが大学生であるにもかかわらず)、なんとなくヒロインと私の境遇が同じようで苦笑してしまった。
同棲というよりは共棲。
お互いに各々の仕事で生計を立て、なるべくそんなに干渉せず(浮気はしませんが)、自立していて、この先どうなるのかな、10年後には結婚なんてするのかな、と思っている。
こんなにも設定が違うのに同じような境遇だと感じていること自体が大問題なのだが、私と彼女の本質は似ているのだろう。
何も我慢することなく、選択肢があれば自然に気持ちの良い方を選ぶ(選べる)。
親からも自立して、自分の世界の中を自由気ままにどこでも行ける。
マイルールで生きていけること。
理不尽な現実に直面したり、所帯じみたりしない。
そういうあたりが、クリスタルなんじゃないかな。
ブランドは、まあ、ファッションは移り変わるものだから、そんなに共感できるポイントは多くなかったけど。
でも、サンローランは、いいよね。
あと、この装丁、原田治って書いてあるけど、あのハラダオサム??
だよね、やっぱりそうなんだ!
オサムグッズみたいなキャラクターでしか知らなかったけど、こんな瑞々しいイラストもあるんだ。すごい。知れて嬉しい。
なんとなく、東京生まれの子に勧めたい、本。
珍しく時間も忘れて一瞬で読んでしまいました。


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