水に似た感情 / 中島らも

好きだ。この人の書く文章がとても。

すごく実直で、優しい。

近所のブックオフで中島らもを買いあさったあの頃、かなりの本を読んだつもりだったけど、まだまだ未読な作品がいっぱいあったことを知る。

中身もあらすじも知らずに手に取ったこの本は、今の季節にぴったりなストーリーだった。

舞台はインドネシアのバリ島。

知ってるからね。何度か行ったことあるから、リアルに目に映る。

鬱蒼とした森林、いくつものストゥーパ、ガムラン、アンクロン、ケチャの音。

作家のモンクさんは、アッパーと共にバリ島に行く。

ギタリストのソトさんとモンクさんのバリ島ぶらりみたいな番組撮影のためだ。

モンクさんは劇団もしていて(リリパットって言っちゃってるよ)、アッパーはその劇団員なんだけど、今回はマネージャーとして同行。

そして、3泊4日くらいの撮影の旅が始まる。

若いディレクターに喝を入れるモンクさん。

言ってること、全部正しい。ちぐはぐな撮影クルーが、檄を飛ばされて、翌日から確実に変わり始めるのが愛おしい。

ずっとターキーばっかり飲んでるモンクさん。

モンクさんはそのまんま中島らも。

あとがきで彼は、基本的にノン・フィクションであると言っていた。

スウェントラさんの村に着くまでが躁病のおれが書いた。

それ以降は躁病が去って塩たれた状態のおれがメモを頼りに書いたと。

実際は旅の間はずっと躁病だったわけだ。

中島らもを知って初めて「泥酔状態で文章を書く人がいる」ということを知った。

彼は泥酔し切ったうえで、無意識に、半自動的に、著書を書き上げることができる。

酔い潰れて翌日目覚めると、出来上がっているのだ。原稿が。

他の誰でも無い自分の手によって。

そして20代の私はすぐにそれを真似した。

だるい大学のレポートなんて、いっつも泥酔して書いてた。

泥酔しても不思議と書き切ってしまえるもんで、素面だと書き切ることさえできないのだから、酔っ払っているほうがよっぽど優秀だ。

あの頃は、やり終えることが最重要であって、内容なんてどうでもよかった。

日記なんかも、泥酔した状態で、半自動的に何ページも何ページも筆を走らせたりしていた。

後日読み返すと、ミミズみたいな文字で判読に苦しむのだが、たまに素面じゃ生まれ得ないような素敵なフレーズが落ちてた。

海外にもそのように泥酔した状態で作品を書き上げる作家がいる。

例にもれずみんなアル中である。

私はいまだに作家になって印税で暮らせたら、死んでもいいと思ってる。

好きなだけお酒を飲んで、昼過ぎに起きても許されるのは、作家ぐらいだろうから。

またサガンとか、読みたくなる。

やっぱり好きだ。この世界。

そしてもうすぐ中島らもの命日が来る。

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