
亡くなってしまったと聞いて、そういえば、全然読んだことないなあと思ったので、読んでみた。
昭和四十三年の二十一刷で、定価120円と書いてある。
すごい時代だ。
しかも、あとがきが素晴らしいのだが、1955年に『太陽の季節』が新人賞を受賞した2年後に書かれた文章なのである。
なので、この作品が、石原慎太郎がこの先どのような人生を歩んでいくなんて、何にも見えていない状態でのフレッシュな文章なのである。
「これからどうなっていくのでしょう」という感じ。
だって、亡くなってしまった今となってはもう、石原慎太郎はこういう人でした、ってのが完結しちゃっているわけだけど、まさに航海の始まり、というみずみずしさが、この本全部に詰まっている(本は古びてるけどね)。
太陽の季節
最高。ボクシングと恋愛。結構性の描写も細かいので、仕事のお昼休みに読むのはなんだか気恥ずかしくなった。
夜の海、ボートのうえで結ばれて、愛を感じるあたり、なんかすごい、乙女心分かってるなあと思っちゃった。
それにしても終盤は英子の扱いがひどい。
中絶手術を行い、英子も死んでしまう。
灰色の教室
3度も自殺を試みるクラスメート。恋人の美知子に子供ができるが、階段から転倒して流産する。
放課後に博打をするような学生たちのストーリーだが、「太陽の季節」の龍哉と英子が、違う名前で登場する。
処刑の部屋
バーの一室での激しい喧嘩。と記憶。みんな剃刀みたいにヒリヒリしてるな。
ボコボコにリンチされていて、トドメを刺されそうな時に、偶然付き合っていた顕子もそこに居合わせる。
顕子が逃がしてくれたおかげで、ボロボロになりながら、街を、助けを求めて前進する。
ヨットと少年
大江健三郎を最近読んだから、男性のヨットへの憧れ、というのが新鮮かつ親しみ深く感じられた。夢があっていいねえ。
娼婦である春子と恋に落ちた少年。自分のヨットを手に入れて、春子をヨットに誘い、夢がかなったかのように見えたが。
ヨット仲間にバカにされたことを根に持つ。ある悪天の日に、クルーザーが出航するといい、その仲間たちが乗ると聞いて、マキ(マーキ)は折れると知っていながらメインの帆を張る。
出航して連絡が取れなくなり、仲間たちが心配し始めるころ、マーキの友人時次が代打で船に乗っていることを知り、いてもたってもいられず悪天の海へ一人飛び出すマーキ。
切ない。
黒い水
「ヨットと少年」の最後が、「〜やがて黒い水にかき消されて見えなくなった。」なので、なにかまた繋がりがあるのではないかと思ったけど、そうわけではなかった。
松崎と、河合と恭子(きょうだい)の3人が船に乗って、悪天に立ち向かい、河合が2人の恋愛の強さを認める、というハッピーエンドなストーリー。


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