車輪の下 / ヘルマン・ヘッセ

ついで買いした本なので、全然作品も作者も知らなかった。

ドイツの作家と聞いて、そういう気持ちで読んだけど、刻み良い短文が勇ましい。

あとがきを読んで知ったけど、この作品の主人公であるハンスはヘッセ自身だ。

ハンスだけではない。ハイルナーもまた、ヘッセ自身であった。

ハンスは美しくかしこい少年。

賢さを見出され、国に選ばれし学校を受験するため勉強に励む。

厳しい受験勉強。愛した自然や釣りや散歩や何もかもを捨てて受験勉強に励む。

ハンスにとっては苦痛ではなかった。

2位で合格したハンスは、その学校に入学。

学費も出るけど、卒業は国に仕える仕事に就く道が決まっている。36名の学生。

ハイルナーは詩人。

ハイルナーにキスされ、仲良くなった2人。

ハイルナーはぶっとんでいて、校長室で同級生に殴りかかったことによってハンスとは疎遠になるが仲直り。

しかしハイルナーは学校を脱走して退学。

そもそも受験勉強の頃から体調が思わしくなかったハンスは精神病を病み、帰宅(退学)させられる。

父のがっかりした態度。

ゆっくり休み自分を取り戻すハンス。

鍛冶屋で働き始め、女性に恋をして、同僚と酔っ払って、水死。

学校で言われたことは、うまく生きないと車輪に轢かれるよ、と。

結局ハンスは大きい車輪に轢かれてしまったのか。

受験勉強は、厳格な教育は、人間の精神を蝕むというストーリーだった。

作者であるヘッセも概ねハンスと同じ道を辿ったらしい。

大きく違ったのはハンスには母親がいなくて、ヘッセには優しい母親がいたということ。

そしてヘッセは詩人でもあり、ハイルナーのように学校を脱走したのはヘッセでもあった。

すごい、自分の人格を2つに分けることで、こんなに素晴らしい文学になるのか。

古い作品のはずなのに、和訳もとても読みやすかった。

おそらくそれは言語で書かれた文章がとても力強く分かりやすかったから、でしょうね。

ドイツという国の力強さを感じた。

でもヘッセはかなり多文化な人間であるらしく、安定した広い世界観というのがしっかり描かれている。

読めて良かった。

ちなみにタイトルの『車輪の下』に関しての描写は少ししか無い。

退学になる前、学校で成績が下がり始めて校長先生に呼ばれたハンス。

そこで校長先生が言った表現が唯一だったんじゃなかろうか。

「それじゃ結構だ。疲れ切ってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」

結局なってしまったのだけど。

神童と扱われ、神学校に進学し、ハイルナーに恋をして(あれは恋と読んでいいだろう)、ものすごく影響を受けて、ハイルナーが居なくなってしまってからは無気力になり、退学になり、平凡な生活をして、お酒を飲み、女性にも少し恋をする。

最後は酔っ払って溺死。

彼をこうさせてしまったのは、家族であり、まわりの大人であり、学校ではなかったか。

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