
おもしろいなあ。
離婚までして苗字を田中に変えて、ユニクロにアルバイトとして潜入したんだって。
横田さんてジャーナリストは、この本を読むまで知らなかったけど、そうだよなあ、ジャーナリストって、理想としてはそう現場主義であってほしいな、と思わされた。
めちゃくちゃ面白くて、私が同業者だからなんだろうけど、いろんなことがとてもリアルにイメージできたので、一瞬で読み終わってしまった。
弊社とは違うなあ、という印象。
読了後一日経過して、もやもやしていたのは、この本の終盤でビックロの大感謝祭(一週間開催)の時に本社から来たスタッフが商品を片手にストックルームを出たり入ったりうろうろしていて、同じ商品のMサイズもまともに探せず、応援といいつつ足手纏いになるだけだった、という描写だ。
その後の、海外の番組で社長が変装して自分の店舗にアルバイトとして潜入して、こき使われて失敗ばかりで、小売店で働く人がどんな様子かを身をもって知る様子が滑稽だったという描写も。
どちらもやけにもやもやしていたのだが、私の中で、結論としては、そりゃそうでしょ。即戦力になるわけないじゃん。本社のスタッフだよ?社長だよ?店舗で経験積んできたわけじゃなくて、別のルートで経営とかそれぞれの役職の経験積んで今の仕事してるんだから。急に現場に立たされて、使えねーな、って思われたって、そりゃそうだ。しょうがない。それはあなたが突然本社に来て専門的なこと任されたり、突然社長になって会社の経営任されても、全然できなくて足手纏いどころか船を沈めるだけになるようなことと一緒だよ、と思う。
上が下を見に来た、上が下の現場に入ってきた、と思うのがそもそも間違いなんだよ。
私たちは社長も、本社も、店舗スタッフも、みんな横並びで、水の入ったバケツをリレーしていると考えるほうが、みんな幸せじゃないか?
給料の差は責任の差。
多少の差はあれど、社長はあなたになれないし、あなたは社長になれない。
みんな自分の専門的な頭脳や経験をシェアして会社って成り立ってるんじゃないか。
だから、この著者みたいに、アルバイトが社長に向かってギャンギャン吠えているのを見ると、負け犬の遠吠えにしか見えない。
もっと、自信を持ってどっしり構えて、強くいたっていいと思う。
アルバイトがいなくなると困るのは会社だし、会社がなくなって困るのはアルバイトだ。
いや、アルバイトのほうが困らないかもよ。なんて思ったりしたけど。
そこの根本的な考え方には賛同できなかったけど、でもこの書籍は非常に読み応えがあったし、読んでよかったと思った。
そもそもこの本の前哨戦があって、『ユニクロ帝国の光と影』という書籍で、ユニクロが文春を訴えた。
ユニクロのブラックな内情をバラしたことで、経営において被害を被ったという、2億円以上もの訴訟だ。
でも、内情をバラしたと言ってもただ事実を公にしただけだったので、ユニクロが被害者ぶっているほうがおかしい。文春は勝った。ユニクロは負けた。
それでもこの横田さんは追求の手をやめなくて、柳井さんがこれまた負け犬の遠吠えのように「ユニクロのこと(僕のこと)悪く言う人たちは、ユニクロのこと全然知らない人なんですよ」なんて言うモンだから、苗字変えてまで潜入しちゃうんだ。
3店舗を渡り歩いて、1年以上も。
すごい忍耐力だ。ものすごい。
確固たる目的があるからできることだと思うけど、逆に確固たる目的がないとユニクロのアルバイトなんてつとまらないんじゃないかとさえ思った。
そんなに毎週、社長の言葉が全店舗のアルバイトまで届くんだ。
しかも、思いつきで気まぐれのような。
広告レイアウトとか販売方法に後からダメ出しするくらいなら、全部社長チェックの上でやりゃーいいのに。
張り付いたような笑顔は、そんな印象あったけど、企業秘密主義だということは知らなかった。
働く時に、必要以上のNDAをむすばされるのね。NDAっていうか、一方的な誓約書だよね。誓う方に文面が残らないんだから、何を誓ったのかも覚えていないのに、先方にだけその誓約書が原本として残っている。そんな不利なことある?
絶対コピーもらうべきだよ。もらえないならやめるべきだよ。
アルバイトの契約がいつ終わるとか、終わる時にどういう条件があるとか、そういうの全部契約書に書いてあるのに、結ぶ方も(まあこれはわざとだとして)結ばれる方も契約書を軽視しすぎていると思う。
どうして友人とかから軽いテンションで仕事の依頼される時に、期日とお金の話をしない?ノリでなんとなく引き受けて後からもめるの分かってるじゃん。
話をしたところで、文面に残さないと、後から言った言わないの水掛論になるの分かりきってるじゃん。
最近はSNSでみんな簡単に「こんな酷い目に合いました。みんなも気を付けて」とか、被害者ヅラして注意喚起するいいやつふうなこと投稿するけど、知能の低さを露呈しているだけだと思うよ。
なんで契約結ばないんだろう?
大学生の時に憧れの音楽会社の所属アーティストになった時、メンバーみんなでハンコを押したあの契約書に心底震えた。
半信半疑で、なんなら反対していた母親も、あの契約書見せたら一瞬で納得してくれた。応援してくれた。
私は何度も読み返したし、その存在が嬉しかったし、契約満了するまで、心のお守りだった。
「契約をした」ということが、想像以上の強さをくれた。
そして社会人になった後は、契約書は嬉しいことだけじゃない。
お互いの騙し合いだ、ということも学んだ。
特に海外の契約書をたくさん読んだおかげで、「いろんな場合を想定するんだなあ」という感想から、実務的なことも学んだ。
契約書至上主義になったのはいうまでもない。
転職した時には、その企業の契約書を読めば、どんな会社なのかがよく分かる。
どんな取引先とどんな取引をしているかが、誰からから引き継がれるよりも、よっぽど的を得て分かる。
というか、契約内容さえ理解すれば、一番最短でベストなパフォーマンスができる。
契約内容が自分にとって不利なものだったとしても、誰もそれに文句を言えない。
なぜならそれで契約締結したんだから。
その分、契約違反なら、気合いを入れて正面から真っ向勝負すればいい。
それはお互い様。
泣き寝入りとかあり得ない。
それは、どちらかが、迂闊に契約を締結している。
と、思っちゃうんだけどなあ。私は。
とは言え、中国や東南アジアの工場で、格安でアパレル商品を作り続けている人々がいることは事実だ。
法が腐っているなら、真っ向勝負しても勝てない。力でねじ伏せられる。
何が幸せか?心と体の健康を一番に考えよう。
最後は、たとえ契約違反であったとしても、無理な仕事はすぐやめよう。
仮に、高校生のアルバイトみたいにぶっちぎってやめても、寝ているベッドまで人が来て首根っこ掴まれて職場まで連れて行かれるわけでもないでしょ。
電話無視、メール無視、手紙無視、ピンポン無視、ずーっと無視。
それで平穏を取り戻せるなら、間違いなくそうするべきだ。
あんな紙切れよりは、あなたの命のほうが重いはず。


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