A Complete Unknown / 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN

すごいや、俳優って。話し方の癖や、歌声まで変わるなんて。

とても良い映画だった。観に行ってよかったし、ティモシー・シャラメの評価がググッと上がった。

Bob Dylanは、両親のレコードが家にあったから、よく聴いてた。好きなアーティスト。

だからこの映画をティモシーがやるって聞いて、私にはウォンカで歌ってるイメージが強かったから、大丈夫なの?って思ったのだ。

だって、ウォンカの時も、なんか歌声が高めできれいで、なんかティモシーのイメージと違うな、と思ったくらいなのに、今後はあのボブなのだから。程遠いでしょ、と思った。

そしたら、全然違った。

5年かけてギターを練習したらしい。それだけじゃなくて、歌声もそっくりで、びっくりした。

エンドロールで流れた3曲は、ああ、これは本物だよね、いや、ティモシーか?いやいや、本物だ。と思ったのに、全然、ティモシーだった。すごいや。

正直、ボブ・ディラン以外の登場人物は知らない人ばかりだった。

ウディ・ガスリーもピート・シーガーも知らなかった。

ジョーン・バエズも知らなかった。

ウディ・ガスリーがなんで入院しているのか、どういう病気なのか、最後の最後まで分からなかったし、今調べたらハンチントン病という初めて聞く病気だったらしい。

ボブが一切自分の家にいなくて、いつも誰かのどこかをふらりふらりと野良猫のように訪れて、地に足付けない、根を張らない人なのだという生き方が描かれている。

年上の彼女の家に居候しているくせに、ジョーン・バエズを招き入れるのも、頭どうかしていると思った。

ニューポート・フォーク・フェスティバルでThe Times They Are A-Changin’を歌った時の、観客の熱狂と、それを姉と一緒に芝生で見ていたシルヴィの心が痛いほどよく分かった。

ああ、もう手の届かない人になってしまった、自分とは違う世界に生きている人だ、と、ひしひしと突き刺さるあの瞬間。

私は絶対売れっ子アーティストと付き合いたくない。惨めになるから。

ボブは最初からフォークの枠にハマる気は無くて、ロックンロールがカッコよくて好きだと言っていたし、自分を表現する音楽のジャンルは一つには当てはまらないと分かっていたのだろう。

だからフォークを守る気もないし、ロックに死ぬほど憧れているわけでもなくて、その都度、自分が心地良い音楽を作り続けた。

ああ変わってしまった、と昔のファンが離れても、新しいファンを獲得し続けて、今も生きてるレジェンドだ。

彼の生き方こそが、Like a rolling stoneなのだろう。

転がり続けるから、石には藻も生えない。

フォークフェスのトリで、エレキを弾いた青年が、そのまんま大人になって、ノーベル賞の授賞式にも欠席したりするのだ。

やってることが何にも変わらない。いいなあ。

誰にも媚びないし、何か確固たる終着点を求めて真っ直ぐ進んでいるわけでもない。

のらりくらり、ふわりふわり、漂うように心地良く生きている。

彼の生き方と音楽全部がボブ・ディランなのだなあ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました