ハーモニー / 伊藤計劃

本屋さんのSFコーナーでこの人の小説を知って本当によかった。
あたしが論文で書いたことを別の角度からもうちょっと噛み砕いて書いてくれている。
しかもあたしがこれから書こうとすることについても何かしらヒントを与えてくれるようなくれないような。
34歳で亡くなってしまったというのが残念でならない。

この作品は彼の1作目より好きだ。
テーマが親しみやすい。
大災禍の後の極度なまでに厚生を大事にした社会。
過剰に評価される自分の価値。
本当は何の意味もないのに。
それを証明するために自ら命を絶とうとする少女たち。
主人公が女の子というのはいいな。
強くてかっこいいサイボーグみたいでまるでモリイ。
酒や煙草を嗜むところも好きだ。

途中であった、意識と脳の話が興味深い。
いつか実体がなくなって、意識だけコンピューターにデータとして移し込めるようになってしまったら、本当にこの身体はなんの意味を持つのだろう。
脳みそがあってこそのその人の人生。
身体はただの入れ物として、それでも最適な入れ物として、科学的にメンテナンスされながら、最高水準で老衰死まで維持される。
風邪もない、病気もない、痛みも恐怖もない。
そういう状態で、現在の水準の脳みそや意識は維持できるのであろうか。
大切なものを失ったりしないだろうか。
人間として痛みや恐怖を感じることはとても大切なことで、それがないと味わえない感情だって多々あるに違いない。
ただ単純に物理的にマイナスな要素だからといってそういうものを排除してしまったのでは、何かしらのズレが生じてくるのは間違いない。
まだ実体があるだけいい。
これが本当にソフトだけの存在になってしまったとしたら。
それはもはや人間と呼ぶのに相応しくない。
だからと言って入れ物だけではダメなのだ。
脳死してしまったら元も子もないのだ。
意識や感情があってからこその人間。
だからどっちも失えない人間。

何を以て人間とするかという議論ではない。
そうなってしまうことが何を意味するのか。
あたしたちの生きる社会は変化している?
それはどのような変化であって、どのような意味を持つのか。
ということ。

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