冷静と情熱のあいだ(Rosso) / 江國香織

わあ。
やっぱりこっちのほうがしっくりくるなあ。
女心が手に取るように分かるのだ。

夕方に入るお風呂。大好き。
世界に逆流しているみたいで好き。

マーヴに対する「大きい」という描写が
何度も繰り返されるのも大好き。
かつてのあたしが彼を見る度に「美しい」ともらしていたみたいに。

言葉足らずであまり多くを語れないところとかもよく分かる。
べつにこの本に限らず江國さんの文章は本当によくあたしとシンクロする、
と信じてやまない女子がこの日本には星の数ほどいるのだろう。

BluとRossoを読んだ後に抱く感想としては、
ぜったいあおいのほうが愛情が深い。
順正があおいのことを愛しているよりもずっと深く
あおいは順正のことを愛している。
いつだって行動に示したり言葉で表すのは男の子なのに、
女の子はその胸の内に海よりも深い愛情を持ってる。

この小説を読んだ時に、とても素敵だと思ったのが、
イタリアという国を舞台に使用していることだった。
イタリアといえば、当時最愛だった彼と10日間の旅行をして、
フィレンツェもミラノもローマもベネチアもあらゆる主要都市を
溢れんばかりの愛情とともに巡り巡った思い出の土地なのである。

彼のことをひどく愛していた。
それこそあおいと順正の愛情表現がまさしく当てはまるものだった。
遠い昔に失った身体の一部を見つけたと確信した。
それゆえに離れることなどあり得ないと信じていた。
あんな別れ方はしたくなかった。

彼のことをひどく愛していた。
当時のあたしは愛されている自身などなくて、
いつも彼を失ってしまうという不安に怯えていた。
彼が「イタリアにしよう」と春の旅行を提案してくれた真冬の日、
心から救われたと感じたとこを今でも覚えている。
「少なくとも春までは一緒にいられる」と。

その後幾度かの春を共に過ごした。
ある寒い冬の日に美味しいイタリアンレストランで
ワインに舌鼓を打ちながら少し酔っ払っていた時にその話をしたことがあった。
約束をしてくれてとても嬉しかったのだと。
少なくともその将来の時までは君を繋ぎ止めていられる気がして、と。
そうしたら彼は子供を見つめるようなまなざしで優しく微笑んで、
軽い動作で10年後にもまたイタリアに行く約束をしてくれた。
とりあえず10年間はその約束で君を繋ぎ止めておけるのだ、と
この上ない幸福な幸せに身も心も包まれた私は、
その約束をして間もなく彼に別れを告げた。
子供のように泣きじゃくり、しがみついて離れない彼を
心身ともに振り切って歩き出した。

私には分かる。
私たちの約束は決して果されることがない。
あおいと順正のようにいくことは決してない。
理由は簡単だ。
私の中に彼のしこりが何もないから。
彼が今でも私の事を思い出すかどうかは分からない。
ひょっとしたら新しい未来に歩き始めているかもしれない。
ここは前だけ見て歩き続けることしかできない日本だから。
ひょっとしたらあの冬の日の約束を順正みたいに覚えているのかもしれないし、
ひょっとしたら私の事などもう微塵も思い出さなくなっているかもしれない。

そんな事どうでもいいのよ。
あたしは自分の幸せや不幸せは棚に上げて
あおいと順正の幸せな未来をただただ祈る事しかできない。

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